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日欧ヘヴィメタル業界を比べて思うこと

先日、Facebook 個人ページ に日欧の音楽業界について思うことを書きましたが、その後、「もっと多くの人に発信してほしい」との声を頂きました。
なので、少し追加編集して、ブログに投稿することにしました。

勿論、下記に私が書いたことが全てだとは言いません。
私が知らないことも多いでしょうし、全然違う形態で活動しておられる方々もいると思います。
あくまで”私が個人的に経験した範囲内で感じた傾向”として読んで頂けると幸せです。

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自律的アーティストの欧州・他律的アーティストの日本

先日、久しぶりに手にとってみた本があります … 秀間修一氏による「すぐに役立つ音楽著作権講座」。その本編一番最初の見開きのページ(p.5)の次の言葉にとても共感しました。

「…欧米では、アーティストやそのスタッフが著作権制度を良く理解し、その知識を最大限ビジネスに活かそうとしているように感じられます。これは日本の場合はプロダクションがアーティストの全ての活動をマネージメントしているので、アーティスト自身は3K(権利、規定、契約)の知識がなくても活動に支障を来さないのに対して、アメリカなどでは日本でいうところのプロダクションという業種が存在しないため、アーティスト自身が知識を身につけるか、または、知識を身につけているマネージャーや弁護士を雇わなければ活動ができないというビジネス環境の違いによるものではないでしょうか。」

 たった一人で欧州へ渡り、路上でのビラ配りから現地レーベル契約を獲得し、日々、周囲にアジア人0という状況で現地音楽業界の方々と英語討論&交渉していた私。「まさにその通り!」と感じました。
 プロダクションが皆無という訳ではないけれど、欧州ではアーティストがもっと自力で立っているような空気がありました。(正直、あまりアメリカの状況については詳しくありませんが、聞いた話をまとめると、欧州、特にドイツはアメリカ以上に自立傾向が強いように感じます。記憶が正しければ、あのマイケル・キスクでさえ、ハロウィン脱退後、"個人的な"専属マネージャーはいなかったと聞きました。一方、顧問弁護士のいないアーティストは希で、大抵どこの法律事務所にもエンターテインメント業界やアーティスト担当を専門にしている弁護士がいます。)

 欧州では寧ろ、駆け出しのアーティストほどプロダクションや専属マネージャーに交渉を任せているような印象を受けました。恐らく知識がないので、任せるしかないのでしょう。
 大抵のアーティストは、そうした駆け出しの時期に彼らに利用されてしまいます。凄い枚数のCDが世界中で売れているにも関わらず借金地獄に陥ったり……(これはドイツあるあるか?!)。知識のないアーティストは、専属マネージャーやプロダクション抜きに何も活動できない訳ですから、たとえ騙されたとしても、一体どこでどのように騙されているのか……うやむやになってしまいます。また、創作活動において譲らざるを得ない場面が出てくることもあります。「お前を活動させてやってるのは俺たちなんだから口出しするな…」な訳ですね。 
 そうした苦い経験を経て、欧州のアーティストの多くは、やがて自身で知識を身につけて交渉に参加する必要性を感じ始め …… 私の知り合いの中にも、アーティスト活動をしながら法律学校に通い、音楽専門の弁護士になった方もいました。知識で武装して、できる限りの自由を得ようとするのです。経験を積みながら子供が親元を離れようとする、あるいはフリーランス化してゆくというイメージでしょうか。
 勿論、アーティストをよく理解し、彼らの意思を何より尊重するマネージャーやプロダクション、レーベルもあります。運よくそうした方々に出会えば、アーティストは彼らと最高のタッグを組み、安心して創作活動に専念できます。また、そうした揉め事が起こった時(いや、売れれば殆ど必ずと言っていいほど揉め事が起こるのですが)、アーティストを理解して救い出してくれる弁護士もいます。だから、敏腕マネージャーや敏腕弁護士が取り合いになる訳です。

 少し話が逸れましたが、海外では、世界レベルの大物アーティストでも、個人単位ではこうしたフリーランス(?!)状態であることが少なくありません。ですから、間にマネージャーもプロダクションもいれず、一人のアーティスト対アーティストとして直接交渉できる訳です。(少し話せば、互いの経験値や知識はわかりますから、話を対等にすべき相手かどうかは、互いにそれで判断します。)

 私自身について言えば、前回の欧州活動時は専属マネージャーやプロダクションがついていましたが、著作権の虚偽登録や契約違反等の被害を受けて挫折。まさに上に説明した失敗に陥りました。国際裁判を起こす費用などは到底ありませんでしたが、一体どこで何がどうなって虚偽レポートが私に届いたのか……それを知る為に、その後は日米の著作権法を一から学んで知財技能士となり、調査、分析により犯人とおぼしき人たちに見当をつけ、そして、日本と欧州の弁護士とともに大陸間交渉を行い……10年以上かけて権利をすべて取り戻しました(失われたお金は戻りませんが、そこは諦めます)。また、英文契約書に慣れる為に、英語の底力も鍛える必要があると思い、海外大学院で"英語言語と文化学"の修士も取得し、現在は、日本と海外に対応できる顧問弁護士をつけています。しかし、専属マネージャーは付けていませんし、個人的にはプロダクションにも属していません。その方が安全だと思っています。(あ、非専属マネージャーは欲しいかな…)

 欧州であれば、このように自分で知識をつけて独立しているアーティストを、それだけで素人と判断することはありません。一方、日本は「ある程度の経験やステイタスのあるミュージシャンは直接交渉できない」のが常識となっているのか、時々「直接交渉できるアーティスト=素人」とみなす人と出会います(その事実だけで話の機会が奪われてしまうのです)。勿論、日本独特のスタイルを非難する気はありません。そのスタイルの方が合うアーティストもいるでしょう。しかし、そのスタイルで活動するアーティストしか一流とみなさないのは違うと思います。
 
 私は、表現したいことがハッキリしているので、できる限り自分で決定権を持ち、自分の思うように、心から湧き出る想いを楽曲にしていきたい。"売れるかどうか"云々よりも(勿論、それも考慮しなければならないのはわかっていますが)そうした表現を大事にしたい。日本でも、そのようなアーティストによる"自発的・自律的"な活動がもっと許されて良い気がします。そのような"一流アーティスト"のあり方だって、もっとあって良いと思います。外部からの力ではなく、内部から爆発するように自然に溢れ出てくるのが生命のエネルギーであり、究極的にはそれを表現するのが芸術だと思うから…。

 日本の枠に固まり過ぎず、世界の枠に目を向けたい。そして、今後 海外を視野に入れた活動を目指すミュージシャンの皆さんには、頭を柔軟に保ち、自ら交渉に応じられるよう、少しでも、権利・規定・契約の知識を身につけて欲しいと思います。

▼ ヴァッケン・オープン・エアー出演後の記者会見
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