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Thanks to all I’ve seen in every moment of my life … you all are my Heaven Below!

マルクトハレ

前回のブログ後、もう一つのエエ話(コンサートホール Markthalleの)も聞きたいという声が届いたので、本日はそれを少しご紹介します。

2002年にハンブルグに来て最初のうちは、本当に毎週、ライブハウスでチラシ配り、
そればっかりやっていました。

そして、その日は Markthalle でした。
いつも通り、ライブ終了後に扉付近でチラシを配らせて貰う許可を取り、
チケットを購入してコンサートホールの中に入ったのでした。
そうそう、ここもなかなか大きなホールなんですよ。
▼一番手前のビルが Markthalle
1280px-Hamburg.markthalle.Übersicht.wmt
Photo by Wikimedia Commons : https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hamburg.markthalle.%C3%9Cbersicht.wmt.jpg
でも、その日は、普段と違い……
現地で知り合って友達になった米国人女性のスーザンが一緒でした。

スーザンはよく自分に自信が無いと言っていて……どちらかというとシャイなタイプ。
でも、だからこそ自分の信念を主張する音楽に憧れていたのかな。
とにかく、ハードロックやヘヴィメタルが大好きでした。
で、私がへヴィメタル・バンドで歌うって夢を追って単身ハンブルグまで来たと話すと、それこそ瞳を輝かせて……
「サエコ、あなたの行動力、凄い!!! 私、サエコの夢を一緒に応援したい!!」
ついには「あたなの夢の実現は私の夢よ!!」 と…。
それから、行動を共にするようになりました。

そして、この日はちょうど彼女の好きなバンドのライブだった事もあり、一緒に Markthalle まで来てくれたのでした。

さて、ホールに入った後、開演時間まで少しあったので、二人でバーで飲み物を注文していると……突然、横の壁沿いの部屋の扉が開いたんです。
空いた扉の中は事務所のようでした。
その中から、40代後半くらいの男性が出て来て……バーの人に何か話し、そのまま部屋に戻ろうとしました。なんとなく会場責任者のような、そんな雰囲気でした。

その瞬間、スーザンが突然…
「サエコ、あの人に話したら?
 一流バンドが沢山演奏するホールだから、ボーカルを探してるバンドの情報も知ってるかもしれないわよ。」
そう言って、男性が部屋へ戻ろうとした瞬間、彼女は私の背中を押しました。
「サエコ、今よ!行くの!」
彼の前へと押された私。
”え〜??こんな私が、こんな一流ホールのオーナーに???”とドキドキしつつ……
「す、すいません。お尋ねしたいことがあるのですが...。」
男性は少し困ったような表情で私を見た。
「今、忙しいから他のスタッフに聞いて欲しいんだけど…」
彼がそのまま部屋へ戻ろうとすると、私の後ろからスーザンがやって来て、更に声をかけた。
「彼女、日本からたった一人で来たの!だから、ねぇ、少しだけ聞いてあげて。」
彼は、私とスーザンを見た。
「一人で? 何を言ってるんだ、今、君と一緒じゃないか。」
「違うのよ。私はハンブルグで彼女と知り合いになっただけなの。
 彼女は一人で日本から飛んで来たの!!ドイツ語もわからないのによ!!
 一人でハンブルグのライブハウスを毎晩回ってるの!!
 お願いだから、聞いてあげてよ!」

「OK」 彼は渋々、私の話に耳を貸した。
私はリュックからチラシを取り出して……
「私、日本人のシンガーです。ヨーロッパのヘヴィ・メタル・バンドに加入したいんです。
 だから、もしシンガーを探しているバンドの情報があったら、連絡を貰えませんか。お願いします。」
チラシを見て、彼の表情が少しだけ変わった。
「君、本当にその為だけにハンブルグへ?」
「はい。」
「他に資料はある?音源とか…。」
リュックから、今度は、持参したCDRを渡した。
そこには Fairy Mirror 時代にリリースしたデモテープの曲が数曲入っていた。
CDRを受け取ると、彼はいきなりそれを部屋の中の機材に入れて再生した。
しばらく聴いて、彼は言った。
「悪くないね。」
ボリュームを上げる。
すると、大きなホール全体に私の曲が響いた。
スーザンが喜びの声をあげる。
「サエコ、凄いじゃない!あなたの曲よ!
今、この会場にいる皆があなたの曲を聴いてるのよ!!」

そして、彼はそのまま最後まで全曲流してくれ……終わると最後にこう言った。
「とても良い声をしてると思う。
バンドがあるかはわからないけど、君のその勇気に敬意を表すよ。
資料と音源を貰えるかい?何かあったら私が君に連絡しよう。頑張って!」
「有り難うございます。」
「幸運を祈ってるよ!」
最初はそっけなかった彼だったが、最後はそう言って、笑顔で私の肩を叩いてくれたのだった。

その後、しばらくしてスーザンは米国へ帰ってしまった。
電話番号も変わってしまって……当時はSNSなんて無かったし
その後、私が契約を手にしたことを彼女に伝えることはできなかった。

でも、Markthalle のオーナーには、アルバム・リリース時にサンプル盤を渡しに行った。
「覚えてますか?アルバム、完成したんです。だから…」
「勿論覚えてるよ!!ここにメンバー募集のチラシを配りにきたんだったよね!!」
私のアルバムを手にして…
「たった一人のところから、君は本当にやったんだね!!」
「はい」
「音楽はそう甘いもんでもない。
 今後、大変な事もあるかもしれない。
 でも、君にはずっと、ずっと歌い続けて欲しい。」
「はい!」
それが2006年の帰国直前に彼と交わした会話だった。
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